「調理師はやめとけ」と言われる5つの理由|きつい・底辺は本当か
これまで友人や家族との会話のなかで、「飲食店はキツいよね」「調理師や料理人はやめておいた方がいい」と言われたことはありませんか?
「調理師はやめとけ」と言われる理由は、長時間労働・低賃金・休みの取りにくさ・上下関係など複数考えられます。
ただしこれらの多くは、調理師という仕事に必ずついてくるものではありません。
その大半は、あなたが今いる職場の条件によるものです。
この記事では、言われている理由をひとつずつ見ていきます。
どこへ移っても同じことなのか、それとも今の職場だから起きていることなのか。
分けて考えると、辞めるべきは「調理師」や「料理人」という仕事なのか、それとも「今の職場」なのかが見えてきます。
「調理師はやめとけ」と言われる5つの理由
よく挙げられる5つを、順に見ていきます。
① 労働時間が長い
仕込みから閉店後の片付けまで、拘束時間が長くなりやすい。
ランチとディナーの間に中抜けがあり、実質的に朝から夜まで店にいる。
こうした働き方が「やめとけ」と言われる筆頭の理由です。
ただし、この労働時間の長さは業態によって大きく変わります。
営業時間が固定されている社員食堂や給食の現場と、深夜まで営業する個人店では、同じ調理師でも一日の時間の使い方がまったく違います。ホテルや宴会施設のようにシフト制が組まれている職場では、勤務時間が事前に決まっています。
→ これは、職場を変えれば変わります。
料理人・調理という仕事に、長時間労働が必ずついてくるわけではありません。
② 給与が経験に見合わない
10年やっても手取りが増えない。
技術は上がっているのに、給料は入った頃と大差ない。これも頻繁に挙がる理由です。
給料が上がるかどうかを決めているのは、腕そのものではありません。
その職場に「技能を評価する仕組み」があるかどうかです。
昇給の基準や昇格の条件が決まっている職場では、任される仕事が増えれば給料も上がります。
決まっていない職場では、仕事だけが増えて据え置きになります。
→ これも、職場を変えれば変わります。
きちんとした評価制度の有無、運用実態の有無により決まる話で、あなたの腕の問題ではありません。
自分の給料が今の仕事内容に見合っているかは、調理師の平均年収は379.1万円|給料・手取り・賞与と年収を上げる方法にセルフチェックがあります。こちらも合わせて読んでみてください。
③ 休みが取りにくい
シフトに穴を開けられない。有給を申請しづらい。連休が取れない。
これは人員体制の問題です。ぎりぎりの人数で回している職場では、一人が休むと現場が止まります。
逆に、人員に余裕のある職場や、休みを制度として管理している職場では、同じ業界でも普通に休めます。
→ これも、職場を変えれば変わります。
飲食業だから休めない、という訳ではありません。その職場が休める体制を作っていないだけです。
④ 上下関係が厳しい
理不尽な叱責、見て覚えろという指導、派閥。厨房特有の空気を理由に挙げる人は少なくありません。
ただ、これはその厨房固有の文化です。
同じ業界の中にも、指導方法を体系化している職場や、ハラスメントに明確な基準を設けている職場があります。
人間関係と職場の文化は、外からは見えないだけで、職場ごとにまったく違います。
→ これも、職場を変えれば変わります。
求人票や面接から職場の実態を見抜く方法は、飲食業界のブラック企業を見破る12のサインにまとめています。
⑤ 体力的な負担が大きい
立ちっぱなし、重い鍋、熱と湿気。これは調理という仕事そのものに伴うものです。
デスクワークに比べて身体を使うのは事実で、どこへ移っても完全にはなくなりません。
負担の度合いは職場によって差があります。ピークが集中する店と分散する現場では、体力的な疲労の蓄積がまるで違います。
夜遅くまで立ち続ける働き方と、日中で終わる働き方でも、回復のしやすさが変わります。
それでも、身体を使う仕事であること自体は変わりません。
→ これは、どこへ移っても変わりません。
5つのうち4つは、職場を変えれば変わる
整理すると、こうなります。
| 言われている理由 | どちらか |
| ① 労働時間が長い | 職場を変えれば変わる |
| ② 給与が経験に見合わない | 職場を変えれば変わる |
| ③ 休みが取りにくい | 職場を変えれば変わる |
| ④ 上下関係が厳しい | 職場を変えれば変わる |
| ⑤ 体力的な負担が大きい | どこへ移っても変わらない |
「調理師はやめとけ」という言葉の背景には、
調理という仕事そのものへの評価と、ある特定の職場への不満が混在したまま流通している、という事実が見えてきます。
そしてその中身の大半は、後者「ある特定の職場への不満」なのです。
もしあなたが今、料理人の仕事がしんどいと感じているなら、その原因が①〜④のどれかである可能性は十分にあります。その場合、辞めるべきなのは調理師という仕事ではなく、今の職場ということになります。
「調理師は底辺職」は本当か
検索していると、この言葉に行き当たった方もいると思います。
賃金の統計を見ると、調理職の平均年収は379.1万円で、全産業の平均を下回ります。
これは事実です。否定できません。
ただ、この数字が何を示しているのかは見ておいてください。
調理職という区分には、入りたての見習いも料理長も、個人店も大規模ホテルも、あらゆる働き方が入っています。
その全てを合わせて平均した数字です。この379万円は、調理師として到達できる金額ではなく、全員をならした真ん中の位置を示しているだけです。 大幅に上回っている人も、下回っている人もいます。
年収の内訳や、どこで差がつくのかは、調理師の平均年収は379.1万円|給料・手取り・賞与と年収を上げる方法で詳しく見られます。
もうひとつ、「底辺職」という言葉が広まりやすい理由があります。
書き込む人が偏っているからです。
しんどい思いをしている人ほど、その気持ちをネットやSNSに書き込みます。
満足して働いている人は、わざわざ書きません。「調理師」や「料理人」と検索して出てくるこのような声は、最初からその偏りを含んだものであることが多いと考えられます。
同じ飲食で、なぜここまで差がつくのか
最初に入った職場しか知らないまま働いていると、その条件が「業界の標準」に見えてきます。
実際には、業界の差より職場ごとの差の方が大きいことも珍しくありません。
では、その差はどこから生まれるのか。あなたの働く条件が、いつ決まっているかを見ると分かります。
| 状況によって決まる職場 | あらかじめ決まっている職場 | |
| 労働時間 | その日の忙しさで終業時刻が変わる | 勤務時間がシフトで先に組まれている |
| 休日 | 人手が足りていれば休める | 月の公休数・年間休日数が決まっている |
| 給料 | いつ上がるのか誰も知らない | 昇給の時期と基準が示されている |
| 役職 | 空きが出たときに声がかかる | 昇格の条件が決められている |
左の職場では、条件はその日その日の状況で変わります。
人が足りなければ休めないし、忙しければ帰れません。
悪意があるわけではなく、決める仕組みがないので、状況がそのまま条件になります。
右の職場では、条件が先に決まっています。
あなたが交渉しなくても、休日数と昇給の基準がすでに存在している状態です。
この違いは、規模や業態と関係することが多いものの、それだけでは決まりません。
小さな店でも制度を整えているところはありますし、大きな会社でも運用されていないことはあります。
確かめる方法はあります。求人票に休日数と昇給条件の記載があるか。
面接で「等級や評価制度はありますか」と聞いたとき、明確な答えが返ってくるか。
答えられない職場は、制度がないか、機能していないかのどちらかです。
もし今、自分の技術が正当に評価されていないと感じているなら、
それはあなたの腕の問題ではなく、決める仕組みのない場所にいるという問題かもしれません。
他の仕事にはない、調理師の強み
・年齢が不利になりにくい
多くの職種では、50代後半から役割が縮小し、60歳前後で収入が下がります。厨房では逆に、仕込みの組み立てや、忙しい日に味を落とさない加減といった部分を、経験の長い人が任されます。体力は落ちても、この判断は経験の分だけ積み上がります。
・積み上げたものが次の職場でそのまま活かせる
別の業界へ移れば、経歴は一度リセットされます。厨房の技術にはそれがありません。
10年やってきた人は、次の厨房でも10年分の腕を持ったまま即戦力として現場に立つことができます。
・動きたいときに動ける
飲食業界の人手不足は続いていて、経験のある調理師・料理人を求める職場は多くあります。
移りたいのに移れない、という状況にはなりにくい仕事です。
辞める前に、一度試してみてほしいこと
しんどいと感じている状態での決断は、視野が狭くなりがちです。
勢いで動いた結果、次の職場でも同じ辛さを繰り返してしまう、ということがあります。
「もう辞めるしかない」と思う前に、こんなことから試せないか、少し立ち止まって考えてみてください。
・まとまった休息をとり、判断できる状態に戻す
・他の店舗や現場で働いている同業の知人に、労働時間や休みの取り方を聞いてみる
・料理長や責任者に、勤務やシフトについて相談してみる
・何がどう変われば続けられそうかを、書き出してみる
これらを試したうえで「やはり環境を変えたい」と思えたなら、その判断は勢いではなく、納得に基づいたものになります。
いま感じている辛さがどこから来ているのかを整理したい場合は、料理人が辛いと感じる原因とは?職場を辞める前に考えたい対処法で、労働環境・人間関係・適性・疲労の4つに切り分けて解説しています。
一人で抱えず、まずは相談から
自分の辛さがどこから来ているのか、そして自分の技能が正当に評価される職場がどこにあるのかは、求人情報を眺めているだけでは見えてきません。
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「まだ辞めると決めたわけではない」という段階のご相談も歓迎しています。まずは、今の状況を聞かせてください。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 「調理師・料理人はやめとけ」と言われるのは本当ですか?
A. 言われている理由の大半は、調理という仕事そのものではなく、働く職場の条件によるものです。
長時間労働・低賃金・休みにくさ・人間関係は、業態や職場、店舗によって大きく異なります。
Q. 30代・40代から職場を変えるのは遅いですか?
A. 遅くありません。調理職は経験そのものが評価されやすく、人手不足を背景に経験者を探す現場は多くあります。
年齢が上がるほど、経験を評価する仕組みのある職場を選べたかどうかで、その後の給与や役職に差が出ます。
Q. 調理師・料理人としての経験は、他の業態でも通用しますか?
A. 通用します。ただし業態が変わると、求められるスピード感や役割が変わることがあります。
事前に、その業態での働き方を具体的に確認しておくと、入社後のギャップを減らせます。