飲食店のサービスを向上させたい。でもどこから直せばいいか分からないときは
飲食店を続けていると、
「料理もスタッフも悪くないはずなのに、最近なんとなくお客様の反応が鈍い」
「レビューで“接客がいまいち”と書かれることが増えた」
といったモヤモヤを感じることがあります。
客数や売上の数字にはまだ大きな異常は出ていなくても、現場に立っていると、
空気感の変化やお客様の表情の小さな違いにはどうしても気づいてしまうものです。
一方で、「サービスを良くしたい」と思っても、実際の現場には、
ホール接客、キッチンオペレーション、メニュー説明やおすすめの仕方など、
見直したいポイントが山ほどあります。
全部を一度に変えようとするとスタッフも混乱し、結局どこから手をつければいいのか分からないまま時間だけが過ぎてしまう、というのが多くの飲食店オーナーの本音ではないでしょうか。
大切なのは、この「なんとなく良くない気がする」という感覚を放置せず、ホール・キッチンそれぞれの具体的なチェックポイントに分解していくことです。
どこにボトルネックがあり、何を優先的に改善すべきかが見えてくると、現場で今日から試せる小さなアクションに落とし込みやすくなります。
この記事では、「飲食店サービス向上」をテーマに、
どんなサインが“サービスの黄色信号”なのか、ホール・キッチンで今日から見直せる具体的なポイント、スタッフが自分からサービスを良くしたくなる仕組みづくりを、順番に整理していきます。
最近、うちのサービスにこんなモヤモヤはありませんか?
接客が雑になってきた気がする
忙しい時間帯になると、挨拶やアイコンタクトが減り、「とりあえず作業をこなしている」ような雰囲気になってしまうことがあります。常連のお客様との会話も以前より減り、「前の方が雰囲気が良かった」と感じてしまう場面が増えていませんか?
混むと提供が遅くなり、お客様の表情が曇る
普段は問題なく回っていても、週末や天候の良い日など、少し客数が増えるだけで提供が一気に遅れ、「まだかな?」という視線がホールに集まることがあります。提供が遅れたテーブルが増えると、クレームやキャンセルまではいかなくても、食べログやGoogleの口コミで「料理はおいしいけれど、提供まで時間がかかった」と書かれてしまうこともあり、気づかないうちに評価や再訪意向に影響しているケースも少なくありません。
スタッフごとにサービスの差が出てしまう
ベテランが担当すると安心して任せられる一方で、アルバイトや新人が入ると急にサービスの質が落ちたように感じる。お客様からの評価も担当者によってバラつきが出てしまい、「お店」としてのサービスレベルが一定にならないことに、オーナーや店長として歯がゆさを感じていないでしょうか。
こうした小さな違和感は、そのままにしておくと口コミや再訪率にじわじわと影響していきます。
「うちは料理で勝負しているから大丈夫」と感じているお店ほど、サービス面でのつまずきが表に出るまでに時間がかかることも少なくありません。
では、飲食店のサービスがお客様のリピートや口コミにどう影響しているのかを押さえながら、
どこを優先して見直すべきか整理していきます。
飲食店のサービスを向上させると、なぜリピートと口コミに直結するのか
リピーターは「集客コストが低い安定客」
飲食店のリピーターは、新規のお客様に比べて「お店に来てもらうまでの集客コスト」が低く、
売上のベースを安定させてくれる存在です。
新規集客にはグルメサイトやチラシ、SNS広告などに1人あたり数千円の費用がかかることが多いのに対し、すでに来店経験のあるリピーターには、LINEクーポンやポイントカードといった比較的低コストな手段で再来店を促すことができます。
現場でも「安定した売上のかなりの部分を常連客が支えている」というお店は少なくありません。
お客様は「料理+体験」でお店を選んでいる
お客様が「また来たい」と感じる理由は、料理そのものだけではなく、接客や居心地、提供スピードなどを含めた体験全体の満足度です。味や価格に加えて、丁寧で親しみやすい接客、ストレスのないオペレーション、清潔感のある空間がそろっているお店ほど、「あの店なら安心」とリピートされやすくなります。
小さなサービスの乱れが、再訪と口コミをじわじわ減らしていく
サービスが乱れてくると、「料理はおいしいけれど、提供が遅い」「店員さんが忙しそうで声をかけづらい」といった、小さな不満が積み重なります。
クレームになるほどではなくても、「次もここにしよう」と決める決め手に欠けてしまい、来店頻度や口コミ投稿の意欲が少しずつ下がっていきます。
ホールでまず見直したいサービスのポイント
入店〜案内〜オーダーまでの基本動線をそろえる
ホールのサービスを見直すときは、まず「最初の5分」に集中すると効果が出やすくなります。
具体的には、入店時の挨拶、席への案内、メニューを渡すタイミング、最初のオーダーを取るまでの流れを、スタッフ全員で揃えることが重要です。
たとえば、「入店から30秒以内に声をかける」「案内時は必ずメニューと一言のおすすめを添える」「着席から◯分以内に最初のオーダーを取りに行く」といった基準を決めておくと、誰が担当してもサービスの印象がぶれにくくなります。
おすすめ・メニュー説明でお客様の「迷い」を減らす
サービスの満足度には、「スムーズに選べたか」という体験も大きく影響します。初めてのお客様ほど、写真や情報が少ないメニューだと迷いやすく、スタッフのフォローがないと「よく分からないまま無難なものを頼んだ」という印象が残りがちです。
そこで、「この時間帯に出したい3品」や「初めての方におすすめの組み合わせ」をあらかじめ決めておき、スタッフ全員が同じ言葉で提案できるようにしておくと、お客様の迷いを減らしつつ、満足度と客単価の両方を上げやすくなります。
忙しい時こそ効く「ひと言」と目配り・気配り
混雑時は、完璧なサービスよりも「ちゃんと見てもらえている」と感じてもらうことが大切です。
料理の提供や会計が少し遅れそうなときに、「少々お時間いただきます」「もうすぐお持ちします」と
一言添えるだけで、不安やストレスは大きく変わります。
また、ホール全体を見渡し、「水が減っているテーブル」「メニューを閉じているテーブル」「会計したそうにしているお客様」などに先回りして声をかける習慣をつけると、クレームになりかけていた不満を未然に防ぎやすくなります。こうした小さな目配り・気配りの積み重ねが、「ここは安心して任せられる店」という印象につながっていきます。
キッチンで見直したいサービスクオリティのポイント
提供時間を短縮するためのオペレーション整理
キッチンのサービスクオリティは、「どれだけ安定した時間で料理を出せるか」が大きなポイントになります。まずは、ランチやディナーの一番忙しい時間帯を思い浮かべて、「オーダーが入る→どのメニューから作り始める→どのコンロやフライヤーを使う→どの順番で盛り付けて出すか」という一連の流れを書き出してみましょう。
たとえば、「焼き時間が長いメニューは早めに通す」「フライヤーやコンロの優先順位を決めておく」「盛り付けの手順を写真付きで共有しておく」といった工夫だけでも、提供時間のバラつきは小さくなります。結果として、ホールが「あと〇分くらいでお持ち出来そうです」とお客様に具体的な案内をしやすくなり、体感のストレスを減らすことにつながります。
ホールとの連携で「出し間違い」と提供順ミスを防ぐ
サービスの満足度を下げる原因として、「料理そのもの」よりも「出し間違い」「提供順のミス」が挙がることは少なくありません。キッチン側でオーダー内容を正しく把握していても、ホールとの情報共有が不十分だと、お客様から見ると「注文と違うものが来た」「あのテーブルの方が後なのに先に出ている」といった不満につながります。
注文時にアレルギーや苦手食材、提供タイミング(まとめて/順番に)といった情報をきちんと伝票や画面上で共有する仕組みをつくることが大切です。さらに、「誰がどのテーブルを担当しているか」もキッチンと共有しておくと、ミスが起きたときのリカバリーもスムーズになり、お客様へのフォローが遅れにくくなります。
忙しくても味と見た目を守るための仕組み
ピークタイムになると、「とにかく出し切る」ことが優先され、味付けや盛り付けの丁寧さがどうしても揺らぎがちです。しかし、お客様の記憶に残るのは、そのときに出された1皿の印象であり、「忙しそうだから今日は仕方ない」とまでは考えてくれません。
そこで、忙しいときほど守るべき「最低ライン」を決めておくことが重要です。たとえば、「このメイン料理だけは必ず責任者が最終チェックする」「盛り付けの写真を厨房内に貼っておき、誰が盛っても同じ見た目になるようにする」といったルールを設けることで、オペレーションを回しながらも、味と見た目のブレを小さく抑えることができます。
スタッフが自分からサービスを良くしたくなる仕組みづくり
スタッフの自発性を引き出すことで、飲食店全体のサービス品質が向上し、店舗のブランド価値や顧客満足も自然と高まります。
マニュアルとロールプレイで接客レベルをそろえる
現場の接客力を安定させるためには、基本的な対応マニュアルを整備し、スタッフ全員に浸透させることが重要です。
・実際のシーンを使ったロールプレイ(模擬接客)を定期的に行うことで、理想の対応を身をもって体験できます。
・新人研修には必ずロールプレイを組み込むことで、基礎的なサービス力が店舗全体で揃います。
フィードバックと「褒める場づくり」でモチベーションを上げる
努力や成長した部分をきちんと評価・フィードバックし、「良い動き」を皆で共有する場があるとモチベーションが高まります。
・定例ミーティング等で「今週のサービス向上エピソード」を発表し合う。
・店長やリーダーが積極的に褒め、チャレンジ精神を後押しすることで、ポジティブな空気が店舗に広がります。
お客様の声を現場と共有し、改善サイクルを回す
お客様アンケートや口コミをスタッフ全員で共有すると、自分たちの行動が店やブランドに直接影響している実感が生まれます。
定期的にフィードバックを集め、それを現場会議などで具体的な改善アクションに落とし込む。
成果が出たら必ず皆で振り返り、「自分たちの成長」が見える形で共有します。
このような工夫が、スタッフ自身の自発的な行動と店舗ブランドの両方を強く育てていきます。
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