飲食店の離職率を下げるには?料理人やスタッフが辞める理由と店舗の対策
「やっと一人前に育ってきたのに、辞めると言われた」
飲食店の店長やオーナーなら、こんな経験があるのではないでしょうか。
時間をかけて育てたスタッフが辞め、残ったメンバーで店を回しながら、また採用と教育を繰り返す。
なぜ、せっかく育てたスタッフは辞めてしまうのでしょうか。
料理人を対象にした調査では、7割以上が働きづらさを感じた経験があると回答しています。
その理由には、サービス残業や調理以外の業務の多さなどが挙げられています。
こうした問題をそのままにしていては、新しいスタッフが入っても、また同じ理由で辞めてしまうかもしれません。
飲食店の離職率を改善するには、採用後のフォローとして、働く環境の見直しも大切です。
この記事では、料理人やスタッフが辞める理由と、店舗で取り組める離職防止策を紹介します。
料理人やスタッフが辞める理由は、働き方と人間関係
料理人やスタッフが辞める背景には、長時間労働やサービス残業といった働き方の問題に加え、そこでの人間関係も深く関わっています。
まずは、飲食業界の離職状況を調査データから見ていきましょう。
宿泊・飲食サービス業では、新卒の半数以上が3年以内に離職
厚生労働省の調査によると、2022年3月に卒業し、宿泊業・飲食サービス業に就職した人の3年以内の離職率は、大学卒で55.4%、高校卒で64.7%でした。
| 学歴 | 宿泊業・飲食サービス業 | 全体 |
| 大学卒 | 55.4% | 33.8% |
| 高校卒 | 64.7% | 37.9% |
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
大学卒・高校卒ともに、半数以上が就職から3年以内に離職しています。全体の離職率と比べても高く、人材が定着しにくい業界であることがわかります。
時間をかけて採用や教育をしても、定着しなければ、再び新たな人材を採用し、育てなければなりません。
では、料理人やスタッフは、どのような理由で職場を離れてしまうのでしょうか。
料理人の7割以上が「働きづらさ」を感じている
株式会社シェアダインが飲食店勤務経験のある料理人204人を対象に実施した調査(2022年)では、73.5%が「働きづらさ」を感じたことがあると回答しています。
具体的な理由として、次のような問題が挙げられています。
| 働きづらさを感じた理由 | 割合 |
| サービス残業が当たり前である | 65.3% |
| 調理以外の業務を割り当てられる | 54.0% |
| シフトが柔軟に組めない | 46.0% |
| 勤務時間が長い | 44.7% |
出典:株式会社シェアダイン 調査リリース(2022年10月12日)
最も多かったのは「サービス残業が当たり前である」で、6割以上が挙げています。
また、「調理以外の業務を割り当てられる」も半数を超えました。
飲食店では、料理人が仕込みや調理だけでなく、清掃や発注などの業務を担当することもあります。
しかし、調理以外の仕事が増えすぎると、本来の仕事に十分な時間を使えず、不満につながる可能性があります。
さらに、同じ調査では64.2%が料理人を辞めて別の仕事に就くことを考えた経験があり、その理由として最も多かったのが「働きたいと思える環境に出会えなかった」(54.2%)でした。
こうした結果からも、料理人に長く働いてもらうためには、日々の業務内容や勤務時間を見直すことが重要だと考えられます。
調理師が辞める理由には、人間関係の問題も
勤務時間や業務内容だけでなく、職場の人間関係も離職につながる要因の一つです。
東北運輸局が東北地方のホテルや旅館の人事担当者を対象に行った調査では、調理師資格者の主な離職理由として、次の項目が挙げられています。(20施設が回答、複数回答)
| 調理師資格者の主な離職理由 | 割合 |
| 人間関係が良くなかった | 55.0% |
| 肉体的な健康を損ねた | 35.0% |
| 賃金の条件が良くなかった | 30.0% |
| キャリアアップのため | 30.0% |
| やりたい仕事ではなかった | 30.0% |
| 精神的な健康を損ねた | 20.0% |
| 労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった | 20.0% |
出典:東北運輸局「ホテル・旅館における調理部門の人手不足対策事業」(2024年12月)
※東北地方のホテル・旅館20施設を対象とした調査であり、飲食業界全体の傾向を示すものではありません。
最も多かったのは「人間関係が良くなかった」で、55.0%でした。
賃金や労働時間だけでなく、職場の人間関係も見過ごせない問題であることがわかります。
厨房では、スタッフ同士の連携が欠かせません。
日頃のコミュニケーションや指示の出し方など、普段の何気ないやり取りが働きやすさに影響することもあります。
スタッフが安心して働き続けられるよう、勤務条件だけでなく、職場の人間関係にも目を向けることが大切です。
収入の低さや昇給の見込みも転職理由に
ある求人サイトが実施した「2025年 飲食業界での転職実態アンケート」では、飲食店で正社員として働き、転職経験のある人の20.5%が、前職を辞めた理由として「収入が低い・上がらないため」を挙げています。
ここまで見てきた働き方や人間関係に加え、収入への不満もスタッフが辞める理由の一つです。
こうした問題は、スタッフ本人の努力だけでは解決が難しく、店側の制度や働く環境を見直す必要があります。
では、スタッフが長く働ける店にするには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
ここからは、飲食店で実践できる離職防止策を紹介します。
料理人やスタッフの定着に欠かせない5つの対策
ここまでにお伝えした通り、スタッフが辞めない店にするには、働く環境を見直すことが大切です。
とはいえ、オーナー自身が1日12〜14時間も現場に立っているような状況では、労働時間の管理や業務分担、面談の仕組みまで、一度に整えるのは難しいでしょう。
だからこそ、最初からすべてを変えようとする必要はありません。
まずは、今のお店で取り組めることを一つ見つけてみましょう。
ここからは、料理人やスタッフの定着につながる5つの対策を、具体的な取り組み方と併せて紹介します。
1.サービス残業をなくし、労働時間を記録する
料理人が働きづらさを感じた理由で最も多かったのは「サービス残業が当たり前である」(65.3%)でした。
まずは、スタッフが実際に何時間働いているのかを正確に把握することが大切です。
取り組むべきことは、次の3つです。
- 1.出勤と退勤の時刻を毎日記録する
- 2.営業前の仕込みや閉店後の片付けも、労働時間として扱う
- 3.残業が多い時間帯を確認し、業務の進め方や人員配置を見直す
記録方法を複雑にする必要はありません。例えば、スマートフォンで打刻できる勤怠管理アプリを活用する方法もあります。
ただし、打刻をスタッフ任せにせず、仕込みや片付けを含めた実際の労働時間が正しく記録されているか確認しましょう。
もちろん、残業が発生した場合は、適切な賃金の支払いも必要です。
2.調理以外の業務を見直し、役割を分ける
「調理以外の業務を割り当てられる」ことに働きづらさを感じた料理人も54.0%に上りました。
飲食店では、料理人が調理だけでなく、清掃や発注などを担当することもあります。しかし、調理以外の仕事が増えすぎると、本来の業務に十分な時間を使えなくなってしまいます。
そこで、次のように業務を見直してみましょう。
- 1.料理人が担当している調理以外の業務を書き出す
- 2.ホールスタッフやアルバイトと分担できる仕事がないか確認する
- 3.発注や事務作業は、担当者や作業する曜日を決める
いきなり大きく役割を変える必要はありません。
まずは、料理人が担当している仕事を一つ書き出し、ほかのスタッフと分担できないか考えることから始めましょう。
3.シフトと休日を計画的に組む
料理人の46.0%が「シフトが柔軟に組めない」ことに働きづらさを感じています。
人手が足りないからといって、特定のスタッフに負担が集中していないでしょうか。
無理なく働ける環境を整えるために、次のことを意識しましょう。
- 1.休みの希望を出す期限とルールを決める
- 2.連続勤務の上限を設け、無理なシフトを組まない
- 3.特定の料理人しかできない作業を減らし、誰かが休んでも厨房が回るようにする
特に大切なのは、特定のスタッフに仕事を任せきりにしないことです。
まずは「この人が休むと困る」という業務がないか確認してみましょう。
複数のスタッフが同じ仕事を担当できるようにすることが、休みやすい環境づくりにつながります。
4.厨房の人間関係を、日頃の声かけと指導方法から見直す
料前述のホテル・旅館を対象とした調査では、調理師資格者の離職理由として最も多かったのが「人間関係が良くなかった」(55.0%)でした。
厨房では、忙しい時間帯ほど素早い判断や指示が求められます。
しかし、伝え方によっては、スタッフが萎縮したり、不満を抱えたりすることもあります。
そこで意識したいのが、忙しい時間帯と落ち着いた時間帯で、指導の仕方を変えることです。
例えば、ディナーのピーク中に調理ミスがあった場合、その場では「火を少し弱めて」「こちらを先に仕上げて」など、必要な修正を短く伝えます。
「なぜ間違えたのか」といった原因の確認や詳しい指導は、営業が落ち着いてから行いましょう。
ただし、食の安全に関わる問題は、その場で適切に対応する必要があります。
また、次のような取り組みも大切です。
- 1.定期的にスタッフの悩みを聞く機会をつくる
- 2.料理長や店長の間で、指導方法や評価基準をそろえる
- 3.注意するときは、人格ではなく行動や仕事の進め方について伝える
- 4.お客様からの理不尽な要求に備え、対応手順を決めておく
とはいえ、忙しい営業の合間に面談の時間を確保するのも大変でしょう。
最初は、まかないの前後などに「最近、困っていることはない?」と3分ほど声をかけることからでも構いません。
休憩を妨げず、ほかのスタッフに聞かれないよう配慮することも大切です。
相談があれば、改めて落ち着いて話せる時間を設けましょう。
一方で、長年同じメンバーで働いている厨房では、人間関係が近いからこそ、指導方法や業務分担の問題に気づきにくいこともあります。店長や料理長自身が改善しようとしても、スタッフとの関係によっては、意見を聞き出すのが難しい場合もあるでしょう。
そうしたときは、第三者の視点を取り入れることも有効です。
5.評価と昇給の基準を明確にする
飲食業界の転職経験者を対象とした調査では、20.5%が前職を辞めた理由に「収入が低い・上がらないため」を挙げています。
毎日頑張って働いていても、何をすれば評価されるのかわからなければ、将来に不安を感じるかもしれません。
そこで、次のような仕組みを整えましょう。
- 1.担当できる業務や役割に応じた評価基準をつくる
- 2.昇給の時期や条件を、入社時や面談で説明する
- 3.今後任せたい仕事や目指せる役割を、スタッフと共有する
すぐに給与を上げることが難しくても、どのような基準で評価されるのかを明確にすることはできます。
まずは、スタッフ一人ひとりに「次にどんな仕事を任せたいか」を伝えることから始めてみましょう。
5つの対策をすべて一度に始める必要はありません。
ただし、サービス残業の解消や適切な労働時間の管理など、法律上必要な対応は優先して進めましょう。
そのうえで、業務分担や面談、評価制度など、自分の店で改善できることを一つずつ増やしていくことが大切です。
店舗だけで改善が難しい場合は、外部の支援も選択肢に
スタッフの離職を防ぐには、日々の業務や指導方法を見直す必要があります。
しかし、店長やオーナー自身が現場に立ち、営業を回している状況では、改善に十分な時間をかけられないこともあるでしょう。
また、長年続いてきた厨房の仕事の進め方や人間関係は、内部のスタッフだけでは見直しにくい場合もあります。
そんなときは、飲食店の現場を理解している第三者に相談するのも一つの方法です。
外部の支援が役立つケース
例えば、次のような課題がある場合です。
- ・対策を試しても、スタッフの早期離職が続いている
- ・業務分担や指導方法を変えたいが、スタッフとの調整が難しい
- ・複数店舗で、スタッフの定着率に差がある
- ・日々の営業が忙しく、教育や業務改善に手が回らない
- ・新規出店に向けて、スタッフの教育体制を整えたい
現場を知るシェフが、店舗運営の改善をサポート
八芳園ヒューマンリソースマネジメントでは、飲食店に特化した人材定着と店舗運営の改善を支援しています。
特徴は、シェフが実際に厨房に入り、スタッフと一緒に働きながら、現場の課題を把握、改善のサポートをすることです。
例えば、業務分担に偏りがないか、指示が特定のスタッフに集中していないか、忙しい時間帯に無理が生じていないかなど、日々の営業を通じて確認します。
そのうえで、次のような支援を行っています。
- ・スタッフの動線や業務分担、チーム構成の見直し
- ・OJTや接客研修、育成マニュアルの整備
- ・特定のスタッフに頼らず、誰が入っても回る店舗オペレーションの構築支援
- ・採用や教育から売上や数値管理までを含めた店舗運営の改善支援
厨房の仕事を理解した第三者が入ることで、店内では気づきにくかった課題を整理し、改善方法を考えやすくなります。
対面とオンラインを組み合わせた支援が可能で、月額プランとスポットでの支援にも対応しています。
店長やオーナーが一人で抱え込まず、第三者に伴走してもらいながら現場に合った仕組みを整えていくことも、人材定着に向けた選択肢の一つといえます。
飲食店の離職率に関するよくある質問
Q. 飲食店の離職率の平均は?
A. 厚生労働省の「令和7年 雇用動向調査」によると、2025年の宿泊業・飲食サービス業の離職率は23.7%でした。全産業平均の13.7%を10ポイント上回っています。ただし、宿泊業を含む数値のため、飲食店だけの離職率ではありません。
出典:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査」
Q. 自店の離職率はどう計算する?
A. 離職率は、一定期間に辞めた人数をもとに計算できます。
離職率(%)=期間中の離職者数 ÷ 期間初めの在籍人数 × 100
例えば、1月1日時点で20人が在籍し、その年に6人が退職した場合、年間の離職率は30%です。
なお、離職率には複数の計算方法があります。他店や公的統計と比較する際は、集計対象や計算方法をそろえましょう。
Q. 料理人が辞める理由で多いものは?
A. 料理人を対象にした調査では、働きづらさを感じた理由として「サービス残業が当たり前である」(65.3%)、「調理以外の業務を割り当てられる」(54.0%)が上位でした。
また、東北地方のホテル・旅館20施設を対象とした調査では、調理師資格者の離職理由として「人間関係が良くなかった」(55.0%)が最も多く挙げられています。
Q. 新人アルバイトがすぐ辞める理由は?
A. アルバイト全体を対象とした調査では、「職場の雰囲気が合わない」「想定より仕事がきつい」「人間関係が合わない」「理不尽な指導を受けた」などが早期離職の理由として上位に挙げられています。
入店前に仕事内容を正しく伝え、入店後も相談しやすい環境を整えることが大切です。
Q. 定着率を上げるには、何から始めればいい?
A. まずは、スタッフの労働時間や業務の負担を確認し、困っていることがないか話を聞いてみましょう。
すべての対策を一度に行う必要はありません。
自分の店で特に負担が大きくなっている部分や法律上必要な対応から、一つずつ改善していくことが大切です。
まとめ|飲食店の離職率を下げるには、働く環境の見直しが大切
飲飲食店の離職率を下げるには、新しい人を採用するだけでなく、今いるスタッフが長く働ける環境を整えることが大切です。
今回紹介した調査では、サービス残業や調理以外の業務、人間関係、収入への不満などが、働きづらさや離職につながる問題として挙げられていました。
こうした問題を改善するために、まずは次の3つから取り組んでみましょう。
- 1.スタッフの労働時間を、仕込みや片付けも含めて正確に把握する
- 2.調理以外の業務を洗い出し、負担が集中していないか確認する
- 3.定期的な面談を行い、スタッフの悩みや不満を把握する
大切なのは、スタッフが辞めてから対策を考えるのではなく、普段からスタッフにとって働きやすい環境とは何かを意識しながら、整えていくことです。
まずは、自分の店でできることから始めてみてはいかがでしょうか。
スタッフの離職が続いているなら
働く環境から見直してみませんか?
「採用しても、なかなかスタッフが定着しない」
「教育や業務改善に取り組みたいけれど、日々の営業で手が回らない」
そんな悩みを抱えている店長・オーナーの方へ。
弊社では、飲食店の現場に入り、スタッフの育成や業務分担、
店舗オペレーションの改善を支援しています。
店舗の状況に合わせ、無理なく続けられる仕組みづくりを一緒に考えます。
人材定着や店舗運営にお悩みの際は、まずお気軽にご相談ください。